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要約筆記の勉強法4

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要約筆記の勉強法4 筆記感覚を掴む

3.筆記感覚は1点集中型で掴む
要約筆記には、特有の「筆記感覚」のようなものがあります。
言葉にするのは難しいのですが、書くための聞き方、情報供給の確実性・安定性を担保した書き方、それを成り立たせるための時間差感、それらを統合したようなものと言えましょうか。
技術の一部ではありますが、テクニックというよりはスタンスという感覚に近いような。
「構え」と「間合い」みたいなもんでしょうかね。剣道風に言えば。
さらに経験値が上がると「筆記勘」のようなものも出てきますが、これはまたちょっと別物。
なんだか言えば言うほどわけわからい感じなので、ともかく話を進めます。

その「要約筆記的感覚」みたいなものを身に付けるにあたり、生の音源を使った練習法があります。
方法としては、生の音源を1本、満足な筆記ができるまで繰り返し書くというもの。
この練習は、少しテクニックだとか筆記の原理だとか目的だとかを理解した後、割と早いうちにやったらいいと思います。
音源としては、話し手が一人のもので、講演など、ある程度の長さがあるものがいい。
途中で司会の台詞が入るようなものは要素が複雑になるのであまり勧めません。
テレビの音でも構いませんが、その場合はなるべく、図表など視覚情報が話に絡んでこないものを選んだほうがいい。
あと些細なことですが、その題材としつこく向きあうことになるので、できるだけ興味のある話題、好きな話し手のもののほうが楽しいと思います。

最初は、ちょっと長めの時間連続で書いてみます。
10分は少し短いです。できれば30分ぐらい。
最初は、とにかく途中で諦めずに書き続けるのがポイント。
途中ちょっと飛んでしまっても開き直って、とにかく食いついて書き続ける。
うまくすれば初回で、自分の筆記のリズム感のようなものが出てきます。
書いたら見直し、筆記中の感覚を参考に改善点を考え、再度書いてみる。
そうやって、この要約筆記が理想と言えるような筆記を完成させていきます。
内容的にも時間的にも無駄の無い・穴の無い筆記文を求めていくと、自分なりの要約筆記的な時間の使い方が見えてきます。
少なくとも、これをこう扱ったら駄目なんだな、といったものが見えてくる。

この練習の狙いは2つあります。
1つは、色々な不確定要素をできるだけ排除して、書くことに焦点を絞って練習するということ。
この練習に限らないことですが、要約筆記の技術には様々な要素が含まれているので、トレーニングの過程では、それらを分類して各々を確実に磨いていくことが肝要です。
これは、手書きでもPCでも同じことが言えると思います。
なんとなく色んなものを書いていても、技術的に詰めの甘い状態で慣れだけ出てくるという状態になりやすい。
ですので、話を理解する、流れを読む、情報を記憶する、といった要素をまずは全部取っ払って、筆記技術と筆記感覚だけを身につける練習をするために、1つの音源を繰り返し使うという方法を取ります。

もう1つの狙いは、要約筆記の技術的な課題を実感しやすくすること。
実践的な筆記練習に入った頃は、話の流れが分かりにくかったとか、知らない単語があったとか、漢字が思い出せなかったとか、そういったものが原因で書けなかった気がしたりしますが、大体の場合、書けない主原因は別にあります。
この練習をすると、話の流れも中身も中の語彙も全部わかっていても、だからといって書けるもんじゃないということを実感することと思います。
繰り返し聞いたものでも書けないならば、初めての話を書けるわけがないというもの。
そうして、その原因解決として各人にとっての技術的な課題を具体的に感じることができれば、この練習をした意味があったと言えるでしょう。
色々な題材をこなして経験の幅を広げるのは、基本的な筆記感覚を掴んだ後でいいです。
稀に実践練習だけで上手くなる人はいますが、それは、最初から自分で筆記の分析が出来る希少な人で、普通は、そうそう出来ないので。

少し補足します。
初回は初聞で書いても予め1回聞いてから書いても、どちらでもいいです。
2回目以降は話の先を知っているわけですが、音より先に書いては駄目。当たり前だけど。
あと、話を覚えてただ書いているような状態もこれまた意味ないので、繰り返すうちに、もしそれに近い状況になってしまったら、違う音源に移ったらいいと思います。
とにかくまずは、自分なりに要約筆記的な感覚を掴むことを目指してほしいと思います。
こういう感じで書けばいいのかなーっと思える感覚。
聞くと書くとか噛み合ったような感覚。

何度やっても全然書けない場合は、ちょっと違う段階を踏んだほうがいいかもしれません。
それについて、じゃあ、次回。


Last Update 2011-05-16 (月) 05:41:05

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