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要約筆記実践4 「むかしむかし あるところに」をどう書くか

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要約筆記実践4 「むかしむかし あるところに」をどう書くか

表記選択の話をするつもりが、えらく横に膨らみつつあります『ももたろう』ネタ。
膨らみついでに、もう一つ。
昔話の定番部分の処理について。

日本の昔話には、おおよその定型があります。
「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。ある日…」
表現のバリエーションは色々ですが、こんな要素が含まれているものが多い。
物語そのものを要約筆記する機会は実際には滅多にないでしょうが、練習題材としては結構おすすめです。
ストーリー性があるものは流れの抜けも見えやすく、必須要素の落ちも分かりやすいため、初心者でもセルフチェックしやすい。
筆記の差から導かれる印象の違いの比較が実感しやすいのも良い点です。
話のスピードは遅く、内容理解も容易で、難語は出てこない。
仮に知らない話でも先を読みやすいため、内容を追うことだけに頭を振り回されず、見通しを持って筆記できる。
純粋に要約筆記の技術的な部分を練習をするのには良い題材だと思います。
かといって難易度が低いわけでもないのですが…。

で、実際にどう書くか。
読みのスピードなどによって大きく変わりますが、少し一般的な見解を。
次の文章。
「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。ある日、おじいさんは…」
読み上げると10秒前後になると思います。
かなりゆっくり読んで15秒というところでしょうか。
よって、書くのに使える時間も、多くて15秒程度というのが目安。
この時間に入るべく、筆記を選択していきます。
手書要約筆記の場合であれば、目安は漢字仮名混で12~18文字(仮名なら17~25文字)。

上の文章を順に見ていきます。
まず、「むかしむかし」。
たいした意味はないものの、完全に抜かすわけにもいかない言葉。
“むかし”または“昔々”とするのが、時間的に妥当です。
次、「あるところに」。
これは、基本的に書きません。
‘書かない’と言うと少々語弊があるので、‘優先的に省く要素’と言っておきます。
全く何も特定していない情報である上、要約もしにくい…というのが理由です。
もちろん、書けるなら書いてもいいんですが、実際問題、手書だと書けないと思う。
書いてみれば分かりますが、「あるところに」を書こうとする時には、既に音声は「おじいさん、おばあさん」に差し掛かっています。
「むかしむかし」に多少でも手間取ろうものなら、「住んでいました」まで終わっている。
そうなった段階で「あるところに」を書き始めては絶対ダメです。
これを書けば、書き終わった頃には「ある日、おじいさんは…」に突入している。
唐突におじいさんを登場させるわけにもいかないので、仕方なくおじいさんとおばあさんのフォローをしているうちに話は先に進み、どんどん苦しくなります。
結果、どこかで何かがスポッと抜けることになってしまう。

どの程度の遅れなら、どのくらい書いて大丈夫かを知っていること。
その時その時の遅れ具合から、その許容量に応じた選択・判断を臨機応変にできること。
そういう技術が求められます。


Last Update 2010-06-03 (木) 11:57:54

本文終了

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