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要約筆記技術14 要約筆記が対応しにくいケース

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要約筆記技術14 要約筆記が対応しにくいケース

以前、要約筆記はデータの非可逆圧縮として捉えることができる、というような話をしました。
(cf.要約筆記技術4 要約筆記とデータ圧縮
データ圧縮において最も圧縮しにくいのは、砂嵐のようなランダムな画像であると聞いたことがありますが、要約筆記においても似たようなことが言えます。
ランダムに文字列を並べられると要約筆記は対応できません。
現実の上では、全く無秩序な文字列の発声が続くということはまずありませんが、固有名詞の列挙、データのリストアップ、質問項目の箇条書きのような一覧表的情報では、要約筆記の技術的処理の余地が非常に少なく、口話と筆記の所要時間の差が如実に響いてきます。
例えば国会質問などで時々あります、内容の独立した専門用語の多い項目が矢継ぎ早に列挙されるようなケース、あれは相当難しいです。
正直、無理…と感じます。
そして当然、発話スピードが上がるほど、対応の難易度は増します。
幸いというか何というか、そこまで難しいものを書かなきゃいけない場面に立ったことはないのですが、要約筆記の限界っていうものはありますね、やっぱり。

ただ、何をどうやっても不充分にしか書けないシチュエーションであっても、その物理制約の中で最大限効果的な筆記をする責任は通訳者にありますし、そのための技も多少はあります。
こういう場合、何を目的として何を優先するかということを、普段以上に絞って対応することになります。
例えば。
質疑応答などで、質問内容を回答発言に被せるとうい手法。
本来は、「誰がどのような質問をし、それに対して誰がどういう回答をしたか」を流れに沿って筆記していくわけですが、それを全部入れるのが無理な場合に、質問項目の筆記は最小限に留め、回答内容の筆記を優先させる。
より聞きたいのは回答であり、質問を全部書いて回答を書けなければ目的は果たせないという判断です。(一般的な見解なので、場合によっては真逆の処理判断になることもあるかもしれません)
また、多くの場合、回答内容を見れば質問を推測できるということも考慮に入れています。
質問者の特定必要性が薄い場合は、質問ごと書かないという選択もします。
ちょっと唐突に例文を出しますが…

男性:先ほどのお話にありました、人工内耳手術の費用について、もう少し詳しく伺いたいのですが。
講師:わかりました。それについてはですね……

というような流れがあったとき、男性の質問部分は書かず、

講師:人工内耳の手術費用は…

から書いていく。というようなことです。
ちょっと分かりやすくベタな例文にしました。(普通、こんなにかさばる名詞句で書き出すのはNG)
この例の前提条件などは割愛しますが(条件はある)、質問を回答に反映させることで、トータルとして伝わる情報の量を上げていく。
正当な手法だと言うには少し躊躇いがありますが、現実的にこれがベストな方法である場合は多いです。
利用者の視覚的な状況把握も考慮に入れています。
この手法、質疑応答の展開が忙しい場合に特に有効なのですが、注意すべきは、この手法は「回答者は質問に答える」という条件の上に成り立つ方法であるということ。
回答者が意図的に質問をはぐらかしたりする場合には、違う問題が生じます。
また、質問をスッキリ反映させられる場合ばかりではありませんので、結果的に何が落ちたかを把握してフォローすることも必要です。


Last Update 2010-06-04 (金) 13:29:41

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