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文書における漢字表記基準

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【文書における漢字表記基準】

公用文と「常用漢字表」

新聞、放送、学校・役所等の公式文書の文章は、一定の表記基準に従って書かれています。
それらの原則となっているのが「常用漢字表」(S56.10.1 内閣告示)。
「常用漢字表」は、『法令・公用文書・新聞・雑誌・放送等、一般社会生活で用いる場合の、効率的で共通性の高い漢字を収め、わかりやすく通じやすい文章を書き表すための漢字使用の目安』(同告示)を示し、1945字の字種、字体、音訓などを総合的に示した表です。
表に示された音読み・訓読み以外の読みは基本的にしません。
しかし、この音訓読みに従ったのではどうしても普通に使われている日本語が書き表せないとして、110字の「付表」を付け、例外を認めています。
(付表 : 明日、梅雨、時計、友達、吹雪、土産、笑顔、風邪、果物、景色、眼鏡、など)
また、「常用漢字表制定」に伴い、様々な規定が改定・制定されました。
「現代仮名遣い」「送り仮名の付け方」「外来語の表記」「公用文における漢字使用等について」などがそうです。
教科書表記も含め、公的な文書はこれらに準拠して書かれているということになります。
但し、「常用漢字表」は専門分野や個人の表記等については対象としておらず、また運用に当たって、事情に応じた考慮を加える余地を認めています。
なお、一般的な新聞は、常用漢字表を基準としつつも「新聞漢字表」という独自の表記基準を定めています。(新聞用語懇談会が決定)
「新聞漢字表」は、時代性への適応と実際の読みやすさを表記に求めた成果とも言え、情報保障においても、常用漢字表と新聞漢字表で基準の分かれる表記については、結果として後者基準を選択することが多いです。
※常用漢字表は2010年6月に改定されました。上記は改定前の内容です。

品詞と表記

「常用漢字表」制定に伴って制定された規定の多くは、前身である「当用漢字表(S21告示)」時代の規定を改正したものです。
新規定の告示によって旧規定は廃止となったが、旧規定の項目のうち、新規定が触れていない部分については、旧規定が生きているものと解釈されました。
『代名詞、副詞、接続詞、感動詞、助動詞、助詞はなるべく仮名書きにする』という「当用漢字表」の規定もそのひとつである。「常用漢字表」では、この項目について触れていません。
その代わりというわけではないが、「常用漢字表」は、代名詞・副詞・接続詞の中で広く使用されるものについては語例として掲げています。
両内容は必ずしも合致せず、表記は分かれました。
現在では、以下のような表記の指標がひとつの標準となっています。

1.副詞は原則として平仮名
例) いちばん いったん かえって しばらく だいぶ だんだん ほとんど もはや ようやく
※「公用文における漢字使用等について」では、‘かなり’、‘ふと’、‘やはり’、‘よほど’以外の副詞は原則として漢字で書くとあります。 しかし、新聞社をはじめ、副詞は平仮名で表記されることが多くなっています。

2.接続詞も基本は平仮名
例) したがって および ならびに ただし ところが また ゆえに すなわち しかし
※「公用文における漢字使用等について」では、‘及び’、‘並びに’、‘又は’、‘若しくは’の四語は漢字で書き、それ以外の接続詞は平仮名で書くのが原則とあります。

3.形式名詞・補助動詞は平仮名
形式名詞・補助動詞とは、名詞・動詞としての特性を持ちつつも、その本来の意味と独立性を失った単語であり、常に付属的に用いられるものです。
【参考】 *形式名詞・ ・ ・ 名詞としての実質的意義がなく、常にその意義を限定する語句を伴ってのみ用いられる名詞
*補助動詞・ ・ ・ 動詞で、本来の意味と独立性を失って付属的に用いられるもの。    (出典:広辞苑第五版)
例) そのとき 終わったところだ そんなこと そのため  [形式名詞]  
※「そのとき」の「とき」は時としての意味も含むが、時間・時刻というより、折・場合という意味合いである。
例) 若返っていく 衰えてくる 試してみる       [補助動詞]  
※「若返っていく」の「いく」には「行く」のニュアンスも含まれるが、実際にgo to・・・という意味ではない。

4.助詞、助動詞は平仮名
例) ~のようだ 2分ほど 3分くらい(ぐらい) 行かない

5.代名詞は以下のように(常用漢字表に準拠)
例) 私 私たち 僕/ぼく おれ われわれ 君 彼 彼ら
※公用文では‘われわれ’ではなく‘我々’を使う。

全体を通して、基本は「常用漢字表」に準拠し、本来の漢字の実質的な意味を失ったものは平仮名で表記するという傾向が見られます。
注意すべきは、これらの表記区分の判断要素が品詞であるという点です。
すなわち、同じ単語でもその使用によって、漢字と平仮名を使い分けるということになります。
たとえば、‘一番’という語は、名詞として使う場合は漢字、副詞として使う場合は平仮名で表記することになります。
‘コンクールで一番になったのが、いちばん嬉しかった’という具合です。

補) 常用漢字・当用漢字の歴史

常用漢字表の前身である当用漢字表は、昭和21年、GHQ占領下に制定されました。
背景には、国字問題があります。
明治以来、表音主義者を中心に、漢字の廃止・改変が主張されていました。
漢字の多様性、複雑性は非効率的であり、また国際情勢に合わないというのが主な理由でした。
国語学者をはじめ、世間からも反対は強く、改革は行われないでいたが、戦後のGHQの占領政策のもと、将来の漢字廃止を前提として当用漢字が策定されました。
同時に多くの新字体が採用され、「同音の漢字による書き換え」が行われ、古来の漢字が消えました。
社会が混乱していた時代に、充分な議論を経ることなく、日本の漢字文化は大きな転換期を迎えたのです。


Last Update 2010-06-03 (木) 12:46:23

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