盲ろう者とは目と耳両方に障害のある人のことをいいます。
富山盲ろう者友の会では、盲ろう者とその支援者の交流・支援活動を行っています。

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音訳と朗読

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【音訳と朗読】

音訳という言葉

音訳活動は昭和30年に始まりましたが、音訳という言葉が生まれたのは1980年代になってからです。
その当時、音訳活動について「音声化」「テープ化」「朗読」などの言葉が使われていました。
現在の音訳とは異なり、多くは「朗読」と呼ぶべき内容でした。

朗読と音訳はどう違うのか

この解はそんなに簡単ではありません。
というのも、完成したものを聞くかぎりにおいて、朗読・音訳を明らかに区別できる場合もある一方、ほとんど差がない場合もあるからです。
しかし両者には、製作にあたってのアプローチの方法において、大きな相違があります。
それは、そもそも両者の目的が大きく違うためです。
朗読とは通例、朗読者による自己表現です。朗読者の個性や感受性のもと、原本を解釈し、演出し、表現する。ある種の芸術性を持ち、聞く側は鑑賞するという立場になる。
対して音訳はあくまでも「目のかわり」です。視覚障害者が情報入手しうるべく、文字を音に変換する。
その情報を得て、感受し、想像し、考え、判断する主体は、音を聞く側の個人です。
受け手の主体性が確保されることは、情報保障にとって重要な要素です。
ですから、ある原本に関して、朗読作品と音訳物の両者が似た仕上がりになっていたとしても、それはあくまでひとつの結果にすぎず、それをもって、朗読と音訳を同一視する理由にはなりません。

朗読と音訳の違いについて、やや本質的な面から説明しました。
しかし実は、実際のケースでは、朗読・音訳の違いは、主体性がどこにあるかといった曖昧な差ではなく、もっと明確な違いとして現れます。
音訳では絶対しない処理を朗読ではし、朗読では絶対しない処理を音訳ではする。
そういう部分が、実際には多々出てきます。
これについては、音訳の技術を説明していく中で触れたいと思いますが、ともかく、朗読と音訳を混同するくらいならば、とりあえずは違うものとして認識した方がいいでしょう。

話の続きです。
1980年の段階では、「朗読」による録音図書が多く作られていました。
そして「朗読」活動に傾いた結果、録音対象図書が文学作品に極端に偏ったのが問題となりました。
音訳という言葉は、この「朗読」活動への傾倒を是正し、本来の録音図書製作の目的を認識し遂行する
ための対策・研究を進める中で使われはじめました。
この研究の成果として、音訳技術を含め、録音図書製作の基盤がこの時期に確立されました。
その後、音訳は徐々に市民権を得、いま全国の音訳ボランティアが共通の音訳技術によって、録音図書製作に取り組んでいます。かつての流れの名残として、ボランティア団体の呼称は、音訳ボランティア、朗読奉仕、朗読ボランティアなど様々ですが、基本的に今作られている録音図書は、全て音訳によるものと考えていいでしょう。


Last Update 2010-06-03 (木) 12:38:48

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