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要約筆記実践1 「みなさん、こんにちは」をどう書くか

本文開始


要約筆記実践1 「みなさん、こんにちは」をどう書くか

抽象論もつまらないので、少し具体的に。
タイトルにあげました、「みなさん、こんにちは」をどう書くか。
いろんな場面で頻出の発話です。
結論から言いますと、
「みなさん、こんにちは。」→[こんにちは。] 
というのが定石です。
少々解説を。
もし「みなさん、こんにちは。」を全部書こうとすれば、4.5~5秒の時間がかかります。
(OHP手書の場合。人によって多少差はあるが、平均的にはそんなもの)
[皆さん]と漢字使用にしても、ほぼ同程度。
対して、「みなさん、こんにちは。」という発話は1~1.5秒ぐらい。
よって、発話と筆記との時間差は3~4秒。
もし全部書いた場合には、少なくとも約3秒、次の発話に食い込むことになります。
3秒というのがどのくらいの時間かと言いますと、普通の話し方の場合で約15文字分(漢字仮名混)。
だいたい1文に匹敵する量です。
つまり、「皆さん、こんにちは。」と聞いて直ちに「みなさん、こんにちは。」と書きはじめると、それを書き終わったときには次の文章が言い終わり、次の次の文章に差し掛かっているという感覚になります。
(文章と言っても色々ですが、ここは話の流れと筆記との時間感覚を言いたいだけで)

とはいえ、この3秒ぐらいの差自体は、絶対不可と言うほどの差でもないです。
場合によっては、後に食い込んででも書ききればいい。
充分挽回できる時間です。
ただ、ここで「みなさん、こんにちは」を全部書くことが、後の挽回をかけてまで書かなきゃいけない内容かどうかという問題になります。
時間は有限なので、何かを拾えば何かが落ちます。
どこかで無理をすれば、どこかに皺寄せがくる。
で、この場合、結論としては「みなさん」要らないでしょう、と。
「みなさん」という言葉が要らない言葉だという意味ではなく、優先度の低い情報で、なおかつ無くても状況認識の上で不都合が生じにくい情報だというような意味です。
不特定の大勢に呼びかける「みなさん」「皆さま」や、一人称の代名詞「私」は、得てしてそういう判断になりがちです。
ということで、最初の定石にたどり着きます。

「みなさん、こんにちは。」→[こんにちは。]

「こんにちは。」を[今日は。]と書くと「きょうは」にも読めるので、これは不可。
同形異音語、要約筆記では要注意です。
パソコン要約筆記では特に、つい漢字を多用しがちなので要注意!!
[みなさん]を書いたなら「こんにちは」が漢字でも一応可なのですが、「みなさん」を省略した途端に「こんにちは」が漢字不可になる。
([今日は。]単独でも、「きょうは。」じゃ文章としておかしいから「こんにちは。」だと分かるでしょ、という指摘も一理あるんですが、要約筆記は、そうそうきちんとした文章だけで成り立たせられるものでもないもので…。特に、書いている最中の文字をリアルタイムで読んでいくという要約筆記の特性上、文あるいは単語の筆記途中でも見え方というのも、考慮すべき要素になります。読み手に一瞬迷いを与えてしまう要約筆記は、良い要約筆記とは言えません。これについてはまた説明しますが、やっぱり[今日は]は不可です。)

なお、「みなさん」を漢字で書くか仮名で書くかは、読みやすさの上でも時間的にも大差ないので、どちらでもいいです。
(仮名のほうが少し速いとは思う。「皆様」なら全部漢字は不可)
筋が通るという意味では、漢字に軍配。
少しこじつけて言えば、平仮名で書いた場合、美奈という女の人に向けた挨拶にも読める。
ま、今の場合それは考えなくていいようなものですが、聴覚情報を文字化する際には、音声言語における韻律情報(アクセントなど)の多くが落ちます。
その情報が文字の表記選択で補えるならば、補う方向に処理するのが情報保障としての筋だろうとは思います。
特に、該当語を判別するための他の情報を落とした場合は。
ま、そういう解釈です。
実質的には、この場合はどっちでもいいです。

上の処理、定石と言いました。
定番の処理ではありますが、別に正解というわけではありません。
違う処理のほうが良い場合だってある。
少し例を出しましょう。

と思ったけど、長くなったので次回に。
そんなに引っ張る内容でもないんですが。
せっかくなので、違う処理をするケース、考えてみてください。


Last Update 2010-06-03 (木) 11:55:32

本文終了

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