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要約筆記実践6 「ある日のことです。」をどう書くか

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要約筆記実践6 「ある日のことです。」をどう書くか

まだ引張りますが、昔話の筆記について。
「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。ある日、おじいさんは…」
という文章で、おじいさん・おばあさんの処理まで触れました。
サクッと最後まで行ってみましょう。

「おじいさん・おばあさん」が或る程度かさばってしまうせいもあって、「住んでいました」は時間的に厳しい状況です。
これまでのところで、[むかし。じいさんとばあさんが]と書いたとすると、既に約8秒は使っている計算。
「住んでいました」に使える時間は多くて2秒程度となります。
[住んでいた。]と常体にしただけではまず入りませんし、平仮名表記を採用して[すんでいた。]としても苦しいところです。
動詞を置換して[いた。]程度に処理するのが精一杯の線かなと思います。
(先で、じいさん・ばあさんを更に抑え目に処理したなら、[すんでいる]で入れられるかも)
ここで動詞の要素を抜かして、[じいさん、ばあさん。]としてしまうのはNG。
[むかし。じいさん、ばあさん。]では、メモ書きになってしまいます。
これでは要約筆記とは呼べません。
まあ、要約筆記では名詞単独のセンテンス等も使うので、それとメモ書きとの区別は難しいところですが。

で、最後。
「ある日、おじいさんは…」
おじいさんの処理は割愛するとして、「ある日」の部分。
これは意外と省略しにくい要素です。
昔話の頻出ワードですが、設定の説明から出来事の描写への転換のきっかけを作る言葉でもあり、無いと通じにくいのです。
「あるところに」は省いたのに「ある日」は省けない理由はその辺にありましょうか。
ただ、導入の言葉として必要なだけなので、特に処理に凝る必要はありません。
「ある日、」「ある日のこと、」「ある日のことです。」など、色々な表現が使われますが、全て[ある日]で充分。
もっとも、時間があるなら[ある日のこと。]まで書いてもいいですが。
そこは+1秒ぐらいの話なので、状況によって判断すればいいと思います。
表記は、これは私の好みもありますが、[あるひ]よりは[ある日]のほうが分かりやすい気がします。
若干時間は食いますが、その差分の読みやすさはあるかなと。

ということで、以上をまとめると、
「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。ある日、おじいさんは…」

[むかし。じいさんと ばあさんが いた。ある日、…]
仮名メインで21文字。書けば12秒ぐらい。
単に文字数・秒数を抑えたということではなく、聞きながら書くという状況下での妥当な判断を重ねていった結果です。
これでも実際に書くと、結構急いで書いている感じになると思います。
書くのが遅い人だと苦しい気がするので、そうなると、「おじいさん・おばあさん」をもう少し触らざるを得ないですね。

最後の「おじいさんは」の要素を入れなかったのは、その先の流れによって処理が変わってくるためです。
入れなくて通じる文章を書けるなら、主語など必ずしも必要ありません。
たまに要約筆記の指導で「5W1Hは必ず書く」みたいなことを言う人がいますが、そんな必要は無いですよ。
それを本当にやったら多分、要約筆記として成り立ちませんので。
言葉を省いても要素は落とさない。
そういう書き方も出来るのが、上手い要約筆記なのではないかなと思います。

次は、「桃太郎」の表記について。
これの表記選択の話をしようと書き始めたはずだったのですが、随分迂回しました。
「桃太郎」「ももたろう」「モモタロウ」。
それぞれの表記に、どういうメリット・デメリットがあるでしょうか。
そして、どの表記を選んだら良いでしょうか。
ちょっと考えてみてください。


Last Update 2010-06-03 (木) 11:58:55

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