盲ろう者とは目と耳両方に障害のある人のことをいいます。
富山盲ろう者友の会では、盲ろう者とその支援者の交流・支援活動を行っています。

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かけはし23

本文開始

かけはし23

(2020年8月発行)

目次

会長挨拶

九曜 弘次郎(全盲難聴)

みなさん、お元気でお過ごしでしょうか。新型コロナウイルスの影響で世の中すっかり変わってしまいましたね。友の会もなかなか活動できず、会員のみなさんがどうされているかと案じております。今回はそんな会員のみなさんから近況をお寄せいただきました。

九曜会長

さて、ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)ということがいわれるようになりましたが、触れることで周りのものを確認したりコミュニケーションを取る盲ろう者には、実に生活しづらい世の中になったものです。幸い富山県は現在のところ感染拡大が落ちついているせいなのか、駅を歩いていても駅員さんが誘導してくださったり、お店でもおつりを手に渡してもらえたりと、私自身はあまり普段と変わらない生活ができているのですが、都会ではちょっと人に近づいただけで心ない言葉をあびせられ、「コロナより人が怖くなった」と言っている視覚障害者の知人もいます。私たち盲ろう者は、これからどのように生活していけばいいのでしょうか。

私自身の近況報告ですが、前号で人工内耳の手術を受けたことを書きました。先生から「とにかく人と会って会話することがリハビリになる」と言われたのですが、このステイホームの生活のなかで人と会うことができません。そこで、毎日ラジオを聞いたりオンラインでのイベントに参加したりして、人の声を聞くようにしています。特にオンラインのイベントは、自宅に居ながらにして遠くのイベントに参加できるので、移動が不自由な盲ろう者にとってはなかなか便利なものです。もちろん通訳の問題はあるのですが、字幕付きのイベントもありますし、また自分の聞きやすい音量や音質に設定することで、個人的にはそれなりに楽しめています。そのような体験を元に、Zoomというオンライン会議システムの使い方を書いてみました。まだまだコロナウイルスは終息しそうにありません。オンラインでの活動なども取り入れながら、アフターコロナでの活動の可能性を探っていきたいと思っています。
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第12回定期総会報告

第12回定期総会は、2020年6月27日に実施する予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、実際には集まらず、メールや郵便による書面決議といたしました。

その結果、表決数は

  • メールによるもの 31
  • はがきによるもの 4

の、合計35でした。会員数52の半数26を超えましたので、総会は成立しました。
 また、表決は、「すべての議題に賛成」が35でした。

  • 2019年度活動報告
  • 2019年度会計決算報告
  • 2020年度役員(案)
  • 2020年度活動計画(案)
  • 2020年度会計予算(案)

のすべての議題が承認されました。ありがとうございました。

 2020年度の役員は、2019年度と変わりません。引き続き、ご支援をよろしくお願いします。
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近況報告

新型コロナウイルスの感染拡大により、友の会では、3月から定例会やサークルなどすべての活動を休止しています。7月の指点字サークルから活動を再開しましたが、会員が互いに会う機会がなかなかありません。そこで「かけはし」では、会員のみなさんに近況報告をお願いしました。
(ブログでは紙面で紹介した投稿の一部を掲載します)

J.U.

今回のコロナウイルス感染に関しては、正直2月時点では、このような深刻な状況になるとは想像もできませんでした。
2月24日の活動を最後に6月28日までの長期間、自粛生活が続きました。
最初は人に会えないさみしさなどありましたが、4月下旬からはZoomというミーティングのアプリやソフトの使用方法などを学習して、5月から少しずつZoomでお話しすることができ、少しは気持ちが楽になりました。
また、コロナ感染という点では、盲ろう通訳、指点字通訳などはできず、盲ろう当事者など困っておられるなと感じました。
私たち視覚障害者は、ものに触れたり触ったりしないといろいろな面で不都合なのですが、6月からの新しい生活様式には不安を感じています。自粛中の生活としては毎日の手洗い、うがいの励行を続けながら、免疫力がアップする食品、納豆、ブロッコリー、しょうがなど取り入れています。
現在また首都圏を中心に急増している感染者。その中でイベントの緩和、「Go To キャンペーン」など、本当にしていいのかなど疑問に思うこともあります。
先が不安なコロナ。今後どうしたらいいのか今でも考え続けております。

T.O.(弱視難聴)

仕事が介護施設で、コロナ関連には厳しい。仕事場が文字通り「3密」で利用者の肌に触るのが複雑な心境になる。従業員の心得が回覧で回ってきて、見ると「公共交通機関の使用は控えること」とあり困惑した。公共交通機関を使わないとスーパーにも行けない私は、2キロ先のスーパーまで歩いて行くしかない。コンビニは1キロ先なので歩いても何とかなるし、大量に買うことも無い。
交通手段としてタクシーがある。公共交通機関だけだと乗り継ぎに1時間待ちがザラなので、時間が惜しい時は使うことはある。
従業員の方から、シールドマスクを分けていただいた。息をするのが楽なので使ってはいるが、外からみたイメージはどのようなものだろう。

T.S.

要約筆記後期講習を受講中です。今のところ順調です、と言いたいのですが・・・。
開講は緊急事態宣言が全国拡大された直後で、私は初回から2回続いて自粛(欠席)しました。この後1回の遅刻でも、欠格です。よって今年後半の目標は、要約筆記講習修了です。
コロナ下、刺激を求めて外出するのもためらわれる中、日課としている練習があります。
一つはタッチタイピング。練習用ソフトをつかいます。今は、打つ速度はそれなりに早くなったのですが、入力ミスが多いので、速度をおとしても、ミスのないタイピングができる練習が必要です。

パソコン画面

次に要約筆記の模擬練習です。パソコンのバックで、ラジオネット配信をはしらせ、それを聴きながら要約し入力する練習です。入力は、専用の要約筆記ソフトを使います。話についていくのも難しく、それを正しく要約するにはまだ時間がかかりそうです。よく使っているのは、NHK聞き逃し配信の‘音の風景’と福祉関係の番組です。
(写真:NHKらじるらじるの聞き逃し配信サービスの画面)

もう一つやっていることは、指点字の練習です。これはネット配信ではなくラジオを生で聞きながら、要約せずになるべく聴いたままを打ちます。‘音の風景’、株式市況そして歌などを使って練習しています。ラジオがあればどこでもできます。
ただ、いずれも一人練習で誰の役にも立っていないことを思うと、止めようかなと思うときもありますが、皆さんに笑って会える時が来るまで何とか頑張って続けて行こうと思います。

Y.Y.(ろう弱視)

手作り財布
手作りバッグ

どこへも行けず、マスクを作ったり、折り紙でミニ着物を作ったりしました。早く皆さんと会いたいです。
(写真はY.Y.さんの作品の数々)

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話題のZoom、使い方は簡単!

Zoomと言う名を聞いた方も多いのでは? オンライン会議システムのひとつです。会社の会議や自宅にいながらの飲み会などによく使われています。基本的なZoomの使い方や、盲ろう者が参加する為に必要な配慮などを、九曜会長に執筆していただきました。

九曜 弘次郎

新型コロナウイルス感染拡大を受け、緊急事態宣言が発令されました。緊急事態宣言の最中には外出の自粛が要請され、イベントの中止、外食の自粛、学校の休校、そして仕事さえも休業が要請され、我々の生活に多大なる影響を及ぼしました。現在(2020/8/1)、緊急事態宣言は解除されていますが、コロナウイルスが消えてなくなったわけではありませんし、今後第2波・第3波がくるともいわれており、いつまたこのような自粛が要請されるかわかりません。
そんななか、テレワーク、オンラインミーティング、オンラインセミナー、オンライン飲み会などといった、インターネットを使ったオンラインでの活動に注目が集まりました。それを受け、今後当会の活動もオンラインでの開催を探っていくことになるかと思います。そこで今回は、オンラインでのイベントでよく用いられている「Zoom」というアプリをご紹介したいと思います。

Zoomってなに?

「Zoom(ズーム)」はインターネットを使って映像や音声をやり取りするテレビ電話システムです。この手のツールはいくつかありますが、Zoomは大勢が参加でき、また操作が簡単なのが特徴です。

準備するもの

Zoomを使うには下記のものを準備する必要があります。

スマートフォンもしくはパソコン

従来の携帯電話や固定電話から音声で参加することも可能ですが、電話代がかかります。かけホーダイを契約する手もありますが、できればインターネットにつながるスマートフォンもしくはパソコンを用意されることをお勧めします。

スピーカーもしくはヘッドホン、マイク、カメラ

スマートフォンの場合はたいてい内蔵されていますが、パソコンの場合マイクやカメラの付いていない機種もあります。音声を送らないのであればマイク、映像を送らないのであればカメラは必要ありませんが、できれば用意されるとよいでしょう。  
ちなみに私は最初のうちはカメラを持っていませんでしたが、顔を映してほしいといわれることもありカメラを購入しました。
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具体的な利用方法

パソコンやスマートフォンの場合、事前にZoomのアプリをインストールしておくことをお勧めします。パソコンの場合は、公式ホームページから、「ミーティング用Zoomクライアント」をダウンロードしてください。

パソコン画面

(写真:パソコンのアプリのダウンロード画面)

スマホの場合は、iPhoneなら「App Store」から、Androidなら「Playストア」から、ダウンロードしてください。「Zoom Cloud Meetings」という名前で登録されているアプリです。アプリをインストールしたことのある方であればそれほど難しくはないと思います。
ミーティングに参加するには、ホスト(主催者)からメールなどで送られてくるリンクをクリックするだけです。初めての参加の場合、名前の入力や、カメラやマイクへのアクセス許可を求めてくるかもしれませんので許可してください。これだけでミーティングに参加することができます。
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盲ろう者が参加するための工夫

Zoomはテレビ会議システムのため、視覚と聴覚に障害のある盲ろう者が参加するには工夫が必要です。いくつか可能性を探ってみたいと思います。

音環境への配慮

パソコン画面

これは盲ろう者に限ったことではありませんが、オンラインでは周囲の生活音がマイクに入ることがあります。複数参加者のこれらの音がマイクに入ると雑音が多くなり、特に難聴者の聞き取りを妨げる原因になります。話さない人はマイクをミュート(消音)するなどの配慮をしましょう。Zoomではマイクのミュート・ミュート解除が簡単に行えますので、操作に慣れておいてください。
(写真:Zoom の画面。音声ミュートのアイコン は下のツールバーの左端にあります)

チャットの利用

Zoomには文字で会話できるチャット機能があります。読み上げソフトではやや使いにくい点がありますが、送られてきたメッセージを読むことは可能です。

パソコン画面

(写真:チャットの文字がZoom 画面の 真ん中に出てくる)

UDトークとの併用

UDトークを使うと音声を文字化することが可能です。音声認識は完璧ではなく間違いも多いのですが、UDトークには認識の誤りを修正する機能があります。ですから、例えば参加者がお互いに修正する、通訳・介助員が一緒にミーティングに参加して修正するなどの手法が考えられます。

パソコン画面

(写真:画面下にUDトークで発生させた文字が出る。字幕もチャットも文字サイズを大きくすることができる)

ろう者の参加

パソコン画面

手話通訳ができる人にも会議に参加してもらい、ろうの利用者は、通訳担当者の画面を常に大きく表示することで、会議に参加することが可能になると思います。
(写真:特定の参加者の画面を大きく固定できる)

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盲ろう者がZoomのミーティングに参加する事例はまだほとんどなく、手探りの状態です。特に全盲全ろうの人の参加には課題があります。友の会の活動で使っていくなかで、できることから可能性を探っていきたいと思っています。
今後友の会でもZoomを使ったオンライン定例会など企画していきたいと思いますので、是非積極的に挑戦していただければ幸いです。
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こんな本、読みました

盲ろう者が書いた本や、盲ろう者について書かれた本がいくつかあります。どんな本なのか、お互いに情報交換しようというコーナーです。今回は、大井さんが、小島 純郎(こじま すみろう)さんの講演集を紹介します。

紹介する本の表紙

『共に学び、共に生きる~点字・手話を通して開いた世界~』
(近代文芸社、1994年)

大井 勉(弱視難聴)

著者、小島 純郎氏は千葉大学教授で福島 智氏と関わり、「社会福祉法人全国盲ろう者協会」の設立時に理事長になった。この本は小島氏の講演録である。個人的に興味を感じたのは障害者教育について述べている点である。著者は「才能のある障害者を伸ばす」「障害者全体の教育レベルを底上げする」の2点を講演で述べている。文化的生活をおくるのに必要な「公正(福祉)」の概念が重要であり、それを重要視した小島氏にただ感嘆するばかりである。ただこの本が絶版であるのが残念である。

(編集部)
小島さんは2004年に逝去されました。福島智さんは、『点字ジャーナル』2004-11に寄せた「哀悼――小島純郎先生逝去に接して」の中で、「(出会って)以来23年あまり、小島先生は私にとっては、公私共の「応援団長」であり、同時に、数多くの障害者の親しい友人であり、そして、「日本の盲ろう者福祉の父」でありつづけた」と書いています。次に引用するのは、福島さんが書いた「哀悼」の最後の部分です。

「どうして、先生、私や障害者たちに力を注がれるのですか」と、いつか尋ねたことがある。先生は静かに言われた。
 「障害者は社会から弱い存在と見られていますが、ぼく自身も、片目で、片耳だし、幼いころからいろいろつらい経験もしていて、自分も弱い存在だと感じています。でも、たとえば、盲ろう者は、ほんとうは人生の重荷を背負って生きる勇気を持った一種の英雄なのだと思いますね。その英雄の手伝いを少しでもしたい・・・」
 多くの障害者の心に温かな光をそそぎ込み、一人の「英雄」が去って行った。
(「哀悼」の文章をarsvi.comから引用)

 『共に学び、共に生きる』は、絶版とのことですが、公立図書館には置いてあることもあると思います。
 会員のみなさんも、紹介したい本があれば編集部までお知らせください。

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