盲ろう者とは
【盲ろう者とは】
●「盲ろう」という障害
視覚・聴覚の両方に障害がある状態を、一般的に「盲ろう(deafblindness)」と称します。
そして、そのような障害を持つ人を「盲ろう者」と呼んでいます。
この「盲ろう」という名称、現時点では法的に規定された障害名ではありません。
明確な定義もありません。
社会制度上の盲ろう者は、“視覚障害者でもあり聴覚障害者でもある人”ということになります。
しかしながら盲ろうという障害は、視覚障害・聴覚障害の派生としてでは捉えきれない側面を持っています。
固有の障害としての「盲ろう」の定義付け、それに特化した対策の進展が急がれています。
●「盲ろう」の分類
視覚障害・聴覚障害といっても、そのタイプ・程度・特徴は様々です。
日本では、視聴覚障害の等級は身体障害者福祉法によって定められており、聴力、視力、視野の障害程度によって区分されていますが、聞こえ方や見え方の個人差は大きく、必ずしも等級で推し量れるものではありません。
またその個人差は、各人の受障歴の違いや生活・教育・情報等の環境の違いによって一層拡大します。
盲ろうの場合は、聴覚の障害程度、視覚の障害程度に加え、それぞれの障害を受けた順序、年齢など、含まれる要素は多様で複雑であり、それが更なる個人差につながっています。
盲ろうの一般的な分類を以下に示します。
A. 障害の種類による分類
・全盲ろう (全ろう、全盲)
・盲難聴 (難聴、全盲)
・弱視ろう (全ろう、弱視)
・弱視難聴 (難聴、弱視)
B. 障害の経緯による分類
・先天盲ろう (先天的に、または早期段階で盲ろう)
・後天盲ろう
・盲ベース (元々は視覚障害者。後に聴覚障害を持つ)
・ろうベース (元々は聴覚障害者。後に視覚障害を持つ)
・その他
●盲ろう者と通訳介助者
無意識の活動も含め、ヒトの行動の大部分は視聴覚情報に依拠しています。
とりわけ言葉を用い社会の中で生きる人間にとって視覚・聴覚の役割は非常に大きく、その障害は個人の自己実現の上でも深刻な影響を与えます。
盲ろう者の抱える代表的な問題は、以下の3つに集約されます。
・コミュニケーションの困難
・情報入手の困難
・外出の困難
これらは明確に区別できるものではありませんが、どれも基本的生活の必需要素です。
そして、これらの困難を打開するために専門的な役割を果たすのが「通訳・介助者」となります。
「通訳・介助者」は、障害者自立支援法に基づく都道府県地域生活支援事業の一つとして2006年に制度化されました。
必須事業としての位置付けではなく、その養成・派遣事業の実態は自治体によって較差があります。
通訳介助者の絶対数の不足も深刻です。
通訳・介助者の仕事を先述と関連付けると、以下のようにまとめられます。
・通訳作業 → コミュニケーションの困難に対して
・翻訳作業 → 情報入手の困難に対して
・移動介助 → 外出の困難に対して
3つに分類しましたが、これらは全て「情報保障」という考え方が基本になっています。
●先天盲ろうの課題
上で、盲ろう者の抱える困難として3つの要素を挙げました。
先天盲ろうの場合には、これに加えて「言語獲得の困難」が深刻な問題となります。
先天的な盲ろう児にとって、周囲との交流によって自然に言語を獲得していくことは極めて困難です。
言語獲得には臨界期が存在し、一定年齢を過ぎた後での言語獲得は難しいと言われています。
現在日本には、盲ろう児専用の教育機関はありません。
全国に潜在する盲ろう児の生涯取り返し難い不利益を回避すべく、取り組みが急がれます。
Last Update 2010-05-10 (月) 19:45:37
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