盲ろう者とは目と耳両方に障害のある人のことをいいます。
富山盲ろう者友の会では、盲ろう者とその支援者の交流・支援活動を行っています。

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かけはし27

本文開始

かけはし27

(2021年8月発行)

目次

会長挨拶

九曜 弘次郎(全盲難聴)

九曜会長

(写真は、聖火ランナーのユニフォームを着た九曜会長。定例会のときに)

オリンピックが始まりました。一部の競技を除いて無観客での開催となりました。8/1現在、東京には緊急事態宣言が出ています。オリンピックの開催が果たしてよいことだったのかどうか、そもそもオリンピックとはいったい何のために開催するのか、といったことを突きつけられる大会だと思います。
 自分にはオリンピックは何の関係もないと思っていたのですが、思いがけず聖火ランナーとしてかかわらせていただきました。コロナ禍での聖火リレーも賛否両論あり、なかには聖火ランナーを辞退される方もいらっしゃいました。聖火リレーに参加することがよいことなのかどうか正直悩みましたが、少しでも多くの方に盲ろう者のことを知ってもらいたいと思って参加しました。幸い多くのマスコミで取り上げていただき、普段利用しているショッピングセンターの店員や駅員からも「新聞記事を見ましたよ」などと声をかけられました。聖火リレーのPR効果は大きいのだなあと感じました。
 情報を得ることが難しい盲ろう者本人にも、仲間がいることが伝わってくれればよいのですが・・・以前、元号が平成に変わって20年以上経過しているというのに、まだ昭和だと思っている盲ろう者がいたという話を聞いたことがあり、大変衝撃を受けました。きっとオリンピックが開催されることや、コロナの感染が大問題になっていることも知らない盲ろう者がいることでしょう。なんとか盲ろう者が友の会と繋がってくれることを願っております。

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総会ですべての議題が承認されました

第13回定期総会は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、メールや郵便による書面表決としました。表決締め切りは6/26でした。

 その結果、表決数は
▽メールによるもの26
▽はがきによるもの3
の、合計29でした。会員数49の半数25を超えましたので、総会は成立しました。

 また、表決は、「すべての議題に賛成」が29でした。
▽2020年度活動報告
▽2020年度会計決算報告
▽2021年度役員(案)
▽2021年度活動計画(案)
▽2021年度会計予算(案)
のすべての議題が承認されました。

ありがとうございました。

 2021年度の役員は、2020年度と変わりません。引き続き、ご支援をよろしくお願いします。

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スポーツを楽しんでいます

(編集部)
今年は、東京オリンピックとパラリンピックの年です。会員の皆さんは、どんなスポーツを楽しんでいるのでしょうか。また、どんな思いを抱いているのでしょうか。寄稿をお願いしました。
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仲間の助けがあれば

九曜 弘次郎

盲ろう者がスポーツをするにはさまざまなバリアがあります。盲ろう者の中には視覚障害者の競技をする人も多いと思います。しかし、球技はボールの小さな音を正確に聞き取る必要があるため盲ろう者が行うことは困難です。

三つ星のスキー教室に参加した九曜会長とガイド

私は視覚障害者と健常者がアウトドアを楽しむ「三つ星山の会」に所属しています。その会では毎年冬にブラインドスキー講習会を行っており、2006年頃からほぼ毎年参加させていただいています。サポーターに方向を声で指示してもらって滑っています。雪の中では音が吸収され、難聴の私は少し怖く感じることもあります。また、スキーは冬にしかできないこと、講習会も年に1回しか行われないことがネックでした。

また、2018年に設立された「富山県ブラインドマラソンクラブ(ブラインド伴走会富山)」にも所属しています。この会は視覚障害者と晴眼者が1本のロープを持って歩いたり走ったりする会です。月に1回、県内の運動公園などで練習を行っています。

伴走会で運動公園を走る九曜会長と伴走者

学生のころは、体育の授業や運動会、マラソン大会等がありましたから、体を動かす機会がそれなりにありましたが、学校を卒業してからというもの、運動することはほとんどなくなっていました。ですので、運動不足になりがちなので、少しは運動した方がいいかなと思っていました。最近、通勤時のジョギングが流行っているようですが、目が見えないとなかなか気軽にそういったことを行うことができません。伴走会のことは少し話には聞いていましたが、マラソンなんてちょっとハードルが高いのではないかと躊躇していました。しかし、走らなくても歩いてもいいし、自分のペースで走ればいいといわれ、参加してみることにしました。自分のペースで歩いたり走ったりできるので気持ち良い汗を流せています。

また、県内で行われる大会にも参加しています。これまで参加したのは、2019年に射水市の太閤山ランドで開かれた「いっちゃん!リレーマラソン」で2.1kmを走りました。また、今年3月に常願寺公園で開催された「常願寺マラソン」で3kmを走りました。学生のころはマラソン大会で3kmを15分ぐらいで走れていましたが、20年以上走っていなかったのでゆっくりと少し走るだけでもなかなかきついものです。
 盲ろう者は一人で運動することは難しいですが、一緒にサポートしてくれる仲間の助けがあればスポーツを楽しむことができます。日頃の運動不足を解消し、健康作りに励んでいきたいと思っています。
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私と「弓」

T.O.(弱視難聴)

子供の時から体育は苦手だった。球技は球がよく見えず、野球のボールやドッジボールの球がわかるときは自分の目の前にあって、予測して補球する動作の概念が全くなかった。走るのは小学生のころは、50メートル走10秒、100メートル走は20秒で運動会では邪魔な存在。階段を早く降りることができずいつも人がいない時を見計らって階段をおりていたが、小学3年の時、階段を降りていると誰かに後ろから突き倒されたことがあった。その時の左足の痛みが激しく、整形外科を受診したら、左足の踵の骨に骨のう腫があるのがわかり、足を酷使する運動は見学する状況になった。その関係でスポーツは無縁の生活を送ってきた。
大学在学中、上記の病気のために障害者体育を選択した。授業ではいろいろな競技をおこなったが、その中で一番好きだったのは「アーチェリー」だった。私は生まれて初めて「弓競技」に触れることになる。通っていた高校や中学には「弓道部」は無く、地元の弓道場にいくには、公共交通で片道1時間かかり、身近にやっている人もいない競技だった。

アーチェリーのイラスト

初めて洋弓を触ったとき、とてもうれしい感情がからだの中から起こっていたのを感じた。さらに左利き用があり、私は左利き用の弓をもって矢を射かけたことをいまでも覚えている。どこを射抜いているかはあまりよく見えず、記憶がはっきりしていないが、射抜き損じた記憶もないので、おそらく数本は的を射ていると思う。もしかすると、的を射抜いているかどうかも関係がないのかもしれない。身体が弓を使って、矢をある場所に移動させる。身体がこの動作に悦びを感じている。ただこれだけなのかもしれない。それでもいい。
 ただ、これ以降、弓を触る機会に恵まれていない。盲学校理療科在学時の時に、地元の弓道場を訪問し実際に弓を射かける光景をみることができたのだが、弓道をするまでには至らなかった。アーチェリーを調べてみたが、自動車を運転できないと行くことができない場所にあることがわかり行くことをあきらめざるを得なかった。
それにしても、運動音痴で体育が嫌いだった私がどうしていまも弓矢をさわってみたいと思っているのだろう。
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陸上競技部

M.H.(ろう弱視)

ろう学校の運動部は、陸上競技部、バレー部、卓球部しかありませんでした。私は硬式テニス部を希望していましたが、無かった。寄宿舎の先輩から「陸上競技部にしたら?」と誘われました。仕方なく入部しました。走るだけの競技は好みでは無かったので、監督から言われて、砲丸投げ、走り幅跳びをやり始めました。夏は暑く、冬は寒く、雨の場合は廊下で筋力トレーニングをやっていました。東海ろうあ陸上競技大会、全国ろうあ陸上競技大会共に出場しました。一番の思い出は全国大会で、仙台に遠征しました。大会が終わって帰る途中、台風に遭いました。時間がかかりましたが、無事、岐阜市に帰って来ました。
今も運動はやりたいのですが、視力が悪化したことと暇が無く!?、代わりにウォーキングをしています。
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風の音・鳥のさえずり

J.U.(全盲)

三つ星の山歩きに参加したUさん

 私とスポーツの関わりとしては「富山三つ星山の会」と「富山ブラインドマラソンクラブ」があります。

三つ星の仲間とともに。左から二人目がUさん

「富山三つ星山の会」には2006年から所属しており、サポーターの方々と登山をしています。最近はハイキング的な山が多いのですが、山では風、草木、樹木などの音、鳥のさえずりなどや大地を踏みしめる感覚など楽しんでいます。

「富山ブラインドマラソンクラブ」は2019年に入会させていただいたのですが、正直走ることが苦手で好きではないのでウォーキングを楽しんでいます。
どちらかというと自分自身の健康と運動不足解消のために入っています。これからもこのような団体で楽しめたらと思っています。
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65歳からのマラソン

T.S.

私は65歳になって初めてマラソンに挑戦しました。第1回富山マラソンをテレビ観戦して感動したのが始まりです。次々とゴールしてくるランナーの「すがすがしい達成感溢れる顔」が私をマラソンにチャレンジさせたのです。「私も走りたい」その思いだけで一人で練習をはじめました。
時間を作り最初は1時間程と時間を決めて。身体が慣れてきたら1㎞、2㎞と少しずつ距離を延ばして 最初の大会参加は3㎞に挑戦、そして次は5㎞に。さらに10㎞にと距離を伸ばして、最終目標は富山マラソン、フル42.195㎞。自分のペースで制限時間7時間内に走れると信じて挑戦。
初マラソンで未知の30㎞地点での感動! そして何とか目標42.195㎞ ゴール達成? テレビで見た「達成感」を実感した。翌年、翌々年と3年間、富山マラソン完走出来ました。
今は歳?相応の「健康づくりが主目的」のジョギング。ブラインド伴走会で月1回走っています。
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スポーツ吹き矢

S.I.

昨年の10月から「スポーツ吹き矢」を始めました。「スポーツ吹き矢」は、使う道具や動作が決まっていて、競技会があるスポーツです。私の所属する団体では、1ラウンド 5 本の矢を吹き、点数を競います。
初心者の私は、長さ1m20cmの筒と20cmの矢を使い、6m先の的を目がけて矢を放ちます。腹式呼吸をベースとした呼吸法で息をため、すべての息を一気に筒に送り込みます。失敗すると矢が的の手前で落ちてしまいます。健康アップや集中力アップにつながりそうです。 残念なことに、コロナの影響で練習が中止になることが多く、また最近の変異株はエアロゾル感染する力が強いと知ってからは、自主的に休んでいます。コロナが収束して練習できる日が待ち遠しいです。
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聖火リレー点火セレモニー

(編集部)
2020東京オリンピック聖火リレーは、富山県では6/2(水)と6/3(木)の二日間、県内を走る予定でしたが、コロナ禍のため公道を走ることが中止され、代わりに点火セレモニー(トーチ・キス・リレー)が行われました。
聖火ランナーに選ばれていた友の会の九曜会長も、セレモニーに参加しました。九曜会長と、伴走をした重富さんに、寄稿していただきました。

聖火ランナーを務めて

九曜 弘次郎

6月2日、高岡市のスポーツコアで開催された、東京2020オリンピック聖火点火セレモニーで聖火を繋ぎました。当初小矢部市をトーチを持って走る予定でしたが、コロナウイルス感染拡大を受け公道での走行が中止となり、点火セレモニーのみが開催されました。

九曜会長がトーチを高々と上げてポーズ

(写真:トーチ・キス壇上の九曜会長と重富さん)

聖火ランナーに応募したのは、所属している富山県ブラインドマラソンクラブから「オリンピック聖火ランナーの募集が行われるので応募してみませんか?」と勧められたのがきっかけです。
盲ろう者のことはまだあまり知られていません。そこで、私が聖火ランナーとして走ることによって、多くの方に盲ろう者のことを知ってもらい、障害があっても仲間たちの助けがあればいろいろなことに挑戦できることを示し、障害や困難があっても決してあきらめないでほしいという思いを込めて聖火を繋ぎました。
実施日1週間前に公道での走行が中止になり残念に感じましたが、テレビや新聞で取り上げていただくことができましたので、盲ろう者のことを知ってほしいという目的はある程度果たせたのではないかと思っています。
聖火にはさまざまな人の思いが込められています。その聖火を繋げられたことは大変うれしく、応募を勧めてくださったブラインドマラソンクラブのみなさん、練習から当日の通訳・介助を兼ねて伴走してくれた重富さんをはじめ、これまで私を支え応援してくださったすべてのみなさんに心から感謝申し上げます。
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伴走を担って

重富 千恵子

東京オリンピック聖火ランナーに選出された九曜さんの伴走をする事になってから1年延期となり、今年、待ちに待った聖火リレー。延期となった昨年中はブラインド伴走会での月1回の練習だけでしたが、今年3月から月数回の二人の練習を始めました。
聖火のトーチに見立てた金属バットを持ち、沿道の皆さんに手を振って応えられるようゆっくり走ることも相談し、応援の様子を詳しく伝えて九曜さんに楽しんで走ってもらいたいと思っていました。

トーチを持った九曜会長と重富さん

ところが、コロナウイルス感染拡大の為、富山県は公道での聖火リレーを中止。高岡スポーツコアでの点火式のみ、となりました。
 ステージ上での「トーチ・キス」「ポーズ」では、九曜さんに動作の通訳をする事だけで精一杯でした。正直言って、公道を走れなかったのは本当に残念におもいました。
今回の九曜さんの聖火ランナーの姿を見て障害を持った人達にも挑戦する事を諦めないで欲しいと思いました。
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こんな本読みました

(編集部)
「かけはし」では、盲ろう、聴覚障害、視覚障害に関する本を会員のみなさんにご紹介いただいています。こんな本を紹介したい、というご希望があれば、編集部までお知らせください(tomonokai@toyamadb.com)。
今回は、パラリンピック(2021/8/24~9/5)を見る前に読むと、競技を数倍楽しく見られるかも、という本を紹介します。

『目の見えないアスリートの身体論 ~なぜ視覚なしでプレイできるのか~』

(伊藤 亜紗著 潮新書、2016年)

K.I.

紹介している本の表紙

障害者スポーツは、車椅子や補助者によって、障害者ができないことを可能にしただけのスポーツか。いやいや、そこにまったく新しいスポーツが生まれているのです、というのが、この本の主旨。『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(2015年)を書いた著者が、今度は視覚障害のあるアスリート(ブラインドサッカー、競泳、陸上、ゴールボール)に話を聞きまくり、独自の身体感覚やスポーツの楽しさを分析した。
たとえばブラインドサッカーについて。「ボールに金属の球や鈴を入れることは、確かに見えない人もボールを扱えるようにするための配慮です。しかし、その結果として実現されるのは「同じ」ではない。音がするボールだからこそ、「音でフェイントをかける技術」や「音を立てないでパスする技術」が問われるようになります。ボールそのものの転がり方も変化します。つまり、「新しい球技」が生み出されるのです」。これだけ読んでも、晴眼者のサッカーとは異なる技術、かけひき、おもしろさがブラインドサッカーにあることがわかる。

読んでいて考えさせられたのは、盲ろう者のスポーツの幅を広げることの難しさ。
たとえばブラインドサッカーは、ボールの音やコーラー(ゴールの位置と距離や角度を伝えるガイド)の声を、方向も含めて正確に聞くことが前提になるから、盲ろう者には難しい。富山にも来てくださった米山 爾さんは、「ウエアラブル遠隔指点字ツール」を使って、盲ろう者と一緒にスポーツを楽しめる社会を作ろう、と呼び掛けている。盲ろう者がさまざまなスポーツを楽しめるようにするためには、ITを使ったり、新たなルールを作ったり、模索を続けないといけないのだろう。 いつか盲ろう者がふつうに出場するパラリンピックに!
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