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点訳入門(6)

本文開始


前回では点字の基本的筆記ルールについて触れました。
けっこう簡単じゃないかと思っていただけたでしょうか。
点訳の原理自体は基本的には難しいものではありません。
情報保障の各技術の中で、最も多くの人に習得可能な技術と言えば、点訳ではないかと思います。
しかし実際に点訳をする場合には、判断に困るケースも多くでてきます。
いろいろな文章を点訳できるようになるためには、原則を知っているだけでは不足で、多くの処理のパターンを知る必要があります。
それを紹介するときりがないので控えますが、原則的なことについて少し細かく補足します。

分かち書きと文節

前回述べたように、点字表記の最も基本的な筆記ルールは「文節分かち書き」です。
点字の文章は基本的に、文節の切れ目で1マス空けて書きます。
例外として、長い複合語などでは文節の途中で切って書く場合もあります。
いずれにしても点訳においては、文節の区切り目がわかることが重要です。
文節の区切り目を判別するには、文章に「ネ」「サ」等を入れて読んでみるという感覚的な方法があります。簡単な文章の場合はその方法で問題ないでしょう。しかし、感覚的な分け方では判断が難しい場合もあります。間違いなく分かち書きをするためには、文法上の規定にのっとって判断することが必要です。
前回、文節は“1つの自立語とその後に続く付属語とで構成される語群”と紹介しました。
本来の‘文節’の定義とは違うのですが、点訳をする上では本来の定義よりも上記の方が概念としてわかりやすいかと思いますので、以後これに沿って話を進めたいと思います。
もう少し詳しく言います。
文節は、1単語から成る場合と、2単語以上にから成る場合に大別できます。
即ち、‘自立語1語’という文節と、‘1つの自立語+1つ以上の付属語’という文節です。
1つの文節には自立語は1つしか入りません。
従って、どの部分が自立語なのかがわかれば、文節の区切り目がわかるということになります。

自立語・付属語

文法上の説明は、自立語は「単独で一文節を構成できる単語」、付属語は「単独で一文節は構成できず、必ず自立語に付属して一文節を構成する単語」となっています。
文節の区切りを判別するために自立語・付属語を区別したいのに、この説明では埒が明きません。
結局のところ、自立語・付属語は品詞で区別するのが妥当だと思います。
助詞・助動詞は付属語。それ以外のものが自立語。
品詞の分類には諸説ありますが、一般的に自立語は動詞・形容詞・形容動詞・名詞・副詞・連体詞・接続詞・感動詞という8つに分類されています。
それぞれの品詞の見分け方は、活用するかしないか・主語になるかならないか等の基準で判断するわけですが、迷ったらやはり辞書を引くべきだと思います。
点字の文章においては、分かち書きの際の区切り方自体が、文章の意味を読み取る上での大きな情報となっているわけですので、墨字の文章での読点の打ち方などとは違って、一定の基準に厳格に従うことが大事だろうと思います。

少し例を見てみましょう。
確認ですが、分かち書きの原則は「文節で区切る」。
文節には自立語が1個だけ含まれるわけですので、区切り方としては、「自立語の前で区切る。付属語の前では切らない。」と考えればいいかと思います。
では、下の文章を分かち書きにしてみて下さい。

①今度の日曜日はサークルに行く予定です。
②サークルに行くべきでしたが、外が寒そうだったので行きませんでした。
③私はこうやって朝早く起きる。

答えは…
①今度の_日曜日は_サークルに_行く_予定です。
②サークルに_行くべきでしたが、_外が_寒そうだったので_行きませんでした。
  ③私は_こう_やって_朝_早く_起きる。

いかがですか。分けられたでしょうか。
付属語が多く連なっていると、1つの文節が長くなって何だか変な感じもしますね。

助詞・助動詞

付属語が見えてくると、判断が少しスムーズになるかもしれません。
主な助詞・助動詞の例を以下にあげます。参考にしてみてください。

[助詞の例]
格助詞  が の に を へ と から より で 
副助詞  は まで だけ ほど など きり ずつ
係助詞  は も ぞ なむ や か こそ しか
終助詞  か な や さ ぞ よ わ ね
間投助詞 よ や を ろ な ね
接続助詞 ば ど ども が ところが のに も し と から けれど
並立助詞 と や か

[助動詞の例]
させる ず そうだ だ たい たがる たり です なり べし まい ます みたいだ 
よう ようだ らしい られる

補足 
単語の中には自立語・付属語両方の意味を持つものもあります。その場合は文章の中でのその単語の働きに応じて処理を決定することになります。
また、接尾辞など、単語でない形態素に関しても、点訳においては基本的に付属語に準じた扱いです。
(形態素:意味を持つ最小単位の言語単位。)

今回は文法の話が中心になりました。
分かち書きは点訳作業の基幹ですので、自立語・付属語の区別は避けて通れない話です。少しは要領が掴めたでしょうか。
次は、日本語の特殊音・数字・アルファベットなどを紹介します。


Last Update 2010-06-03 (木) 12:32:21

本文終了

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