通訳原理と要約筆記
【通訳原理と要約筆記】
盲ろう通訳の特徴
既存の情報保障技術の多くは、「情報形式の変換」を基本原理としています。
これは盲ろう通訳においても同じです。
しかし、視覚障害・聴覚障害の情報保障の場合、複数の感覚ソースからの情報を区別・統合する必要がありません。
そこに視聴覚重複障害への情報保障との大きな較差があります。
また、利用者において、受信できる形式・受信可能量の個人差がかなり大きいというのも盲ろう通訳の特徴です。
利用者の受信可能量を超えた発信は、結果として“伝わらない情報”となってしまいますので、そこに発信量を調節する必要性が生じます。
伝えるべき内容は同じですから、発信量の縮減は、通訳対象情報の圧縮率を高めることを意味します。
ここに、難易度の高い技術が求められることになります。
盲ろう通訳と要約筆記
日本語を用い、音声情報を圧縮して書記言語で伝える既存の通訳技術として、要約筆記があります。
情報の質を保持しつつ表出量を抑える要約筆記の技術理論は、日本語を基盤とする盲ろう通訳の多くに応用が可能です。
ただし、PC要約筆記と手書要約筆記が技術的には区別されるのと同様、表出形式が違えば使う技術は違ってきます。
仮に同じ表出形式であっても、一度に表示できる量など条件が変わってくれば、それだけでもまた技術は変わってきます。
従って、要約筆記の技術が直接、盲ろう通訳に活きるとは限りません。
点訳系の盲ろう通訳では、当然、点訳の知識も必要です。
ただ、要約筆記の感覚、考え方、技術理論が有用であることは間違いないでしょう。
音声情報を正確に、同質な書記言語情報に変換することは、かなり難しい技術です。
通訳者自身が、自分の通訳した内容が適切かどうかを判断できるようになるにも、トレーニングが必要です。
そしてこれらの技術は、情報の圧縮率が高くなればなるほど難易度があがります。
点訳要約筆記
ブリスタ、BMチャット、指点字など、点字系の盲ろう通訳に使う技術を、要約筆記の見地に立って「点訳要約筆記」と分類し、その技術を整理しています。
端的に言えば、点訳要約筆記とは「点訳様式で表記した要約筆記」の総称です。
ここで言う点訳とは、大雑把に言うと「仮名書き+分かち書き」。
点訳という言葉を、やや広義に用いています。
点訳要約筆記は、基本的には点字の文法に則って表記しますが、適切な通訳に必要と判断される場合であれば、正しい点訳ルールには必ずしも拘りません。
それにより、情報低減を幾分か抑え、同時通訳という目的の下で読み取りやすい点字文章の構築を図ります。
また、BMチャットではPCカナ入力をも用いていることもあり、基本的には点字特有の記号は用いない筆記を想定しています。
点訳要約筆記は盲ろう者の情報保障のための技術ですので、要約筆記の要素に加えて、視覚情報の情報の入れ方も技術に含まれてきます。
本サイトでは、点訳要約筆記の技術論も展開していきますが、まだまだ未開発な分野ですので、内容が後に修正される可能性があります。
技術が進展し次第、随時情報を更改します。
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要約筆記に関する私記です。→column目次へ
Last Update 2010-06-03 (木) 12:05:58
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