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公用文の表記基準と情報保障

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【公用文の表記基準と情報保障】

ここで、公用文の表記基準と情報保障との関連について触れておきます。
「公用文の書き方」を、情報保障ではどう考えればいいか。
情報保障の場合、その特性上、公用文の表記基準を守る必要は必ずしもありません。
しかし、誰でも広く利用できるということも情報保障の必須要素であると考えるならば、情報保障技術者が公用文の表記基準を参考知識として知っておくことは決して悪くないでしょう。
新聞や教科書等の表記は多くの利用者にとって見慣れた表記であり、それゆえ読みやすいというのは一理です。
この理由だけをもってしても、情報保障技術者が公用文の表記基準を知ることに一定の意義を見出すことができます。
表記基準のそれぞれの要素について、手書要約筆記の場合の考え方を中心に、以下に記します。

要約筆記と常用漢字表

常用漢字表は、公用文の漢字使用基準の根幹です。
要約筆記においても、対象が不特定多数の場合は、基本的に準拠の方向でいいでしょう。
少なくとも、何らかの明確なメリットがない限り、敢えて慣用外の漢字を書く必然性はないと言えます。
常用漢字表を基本とし、表外字・表外音訓は、それを使うメリットがデメリットを上回る場合に限って使用する。
原則としては、そんなところです。

要約筆記において常用漢字表を知る意義は他にもあります。
一般文書も同じですが、ひとつの文章の中では表記の基準は統一するのが望ましいとされています。
同じ言葉は原則として同一形で表記する。
しかし要約筆記の場合、複数の書き手が順に交代しながら筆記を進めるため、表記の統一は簡単ではありません。
一つの定まった表記基準を要約筆記者が共通して認識することは、筆記文における表記の形をある程度揃える上で、有効に働くと考えられます。

ここで言いたいのは、要約筆記の表記を常用漢字表に準拠させた方が良いということではありません。
要約筆記の目的はあくまでも速やかな情報の保障にあり、そのため以外の表記議論は重要ではない。
求むらくは要約筆記独自の表記基準ということにもなりましょうが、その場合も、軸は公用文の表記基準となってくることでしょう。

要約筆記における送り仮名

常用漢字表と同様、一般的な送り仮名の付け方を知ることは要約筆記を行う上で有用です。
何度も言うようですが、特に不特定多数を対象とした要約筆記では、一般文書における表記基準を準用することは、情報保障の方針として妥当と言えます。
しかし、それにとらわれる必要はありません。
要約筆記の目的はあくまでも「情報の保障」にあります。
文書表記の原則が要約筆記の原則に優先されたのでは本末転倒。
正しい日本語・表記の知識は、あくまでも情報の保障を助ける為に活かされることが肝要です。

送り仮名に関して言えば、省いても違和感なく読めるものは省くという方針で構わないでしょう。
常用漢字法と同じく、表記統一のための共通認識としての役割も望まれますが、送り仮名に関してはバリエーションが限られる上、使い分けの基準は解釈によるところも大きいため、あまり気にする必要はありません。
そもそも同単語・同品詞であっても、その使われ方によって送り仮名が変化することもあり、同一文章内での同一表記という面において、送り仮名の差異による影響はあまり大きくないと思われます。
共通認識という要素を重視するのであれば、当告示を元に、要約筆記独自の補足を加えたガイドラインを作るのも悪くないかもしれません。

要約筆記における形式名詞・補助動詞

結論から言えば、「形式名詞・補助動詞は平仮名で書く」。
これを基本と考えて構いません。
【形式名詞・補助動詞】の項目を見てもらえば分かりますが、形式名詞・補助動詞は、漢字より平仮名のほうが筆記時間が短いものが殆どです。
漢字書には漢字書の利があることも多いものですが、形式名詞・補助動詞の平仮名書きに関しては、それが慣用の形で、しかも速く書けるわけですので、仮名書を採用しない理由はないでしょう。
ただし、例外もありますので、それは要約筆記の原則に則って個々に判断していだだければよろしいかと思います。
(注:形式名詞・補助動詞の項で例示した中で漢字書が速いのは「ほう(方)」。そのような場合は速さを優先すればいい。ただし「方」は、「ほう/かた」の読みがあることから、使用の際には注意を要する。)

その他の平仮名表記と要約筆記

公用文の表記基準において平仮名を用いる言葉は、形式名詞・補助動詞に限りません。
接頭語・接尾語、連語、助詞、助動詞、接続詞、副詞などにおいても、基本的には平仮名を用いるとされています。
これらは改めて紹介しますが、形式名詞・補助動詞の場合と考え方は同じで構いません。
すなわち、公用文の書き方をひとつの目安とし、その上で、書く速さ等々、要約筆記の目的を考慮し判断するということになります。

字幕・文字おこし等の場合

上記は、主に手書要約筆記を想定した記述でした。
字幕・文字おこしの場合は、筆記時間というものを考慮しなくていいぶん、個々の判断については要約筆記とは多少考え方が違ってきます。
それについては字幕・文字おこしの各論で。


Last Update 2010-07-28 (水) 17:20:19

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