点訳入門(9)
数字で書く場合・書かない場合
原文でアラビア数字が用いられている、漢数字が用いられている、という区別は点訳においては、あまり関係ありません。点訳も音訳と同様、“原本に忠実”が基本です。しかし点訳の第1義は、あくまでも読みやすい表記であり、原本の表記体系に忠実という意味では必ずしもないのです。
点字において、数字で書く場合、書かない場合の基準は、大まかに言うと以下になります。
①原則として、数を含む言葉は数字で表す。
②和語、慣用語、固有名詞の中の数字要素は仮名で表す。
少し具体的に見ていきます。
まず原則です。数を含む言葉は数字で表します。当たり前のことを言っているようですが、例外が多く、けっこう難しい法則です。
第55回(ダイ55カイ)、101匹(101ピキ)、4列目(4レツメ)あたりは問題ないでしょう。
三角形(3カクケイ)、四半期(4ハンキ)も、まあいいでしょう。
では、三輪車(3リンシャ)、一流品(1リューヒン)くらいになるとどうでしょうか。
ちょっと違和感がある人もいるでしょうか。
考え方のポイントは、「数量や序列の意味があるかどうか」ということです。
数量や序列の意味が薄れた言葉は仮名で表記します。
一生(イッショー)、零下(レイカ)などがそうです。
数字で書かないものの代表は、和語、慣用語、固有名詞の中の数字要素です。
数字を和語読みする場合は数字は使わず、仮名で書きます。
一人(ヒトリ)、二つ(フタツ)、三十路(ミソジ)、二十歳(ハタチ)などがそうです。
これらは、数量や序列の意味を含んだ言葉ですが、和語読みという理由から仮名表記になります。
慣用語とは、漢数字の入った熟語などで、数量や序列の意味が薄れたものを指します。
上記の例のほか、一般的(イッパンテキ)、青二才(アオニサイ)などがあります。
含まれる漢数字を別の数字に置き換えられるかどうかが判断の目安となります。
固有名詞の中の数字とは、九州(キューシュー)、三郎(サブロー)などです。
ただし、固有名詞の中の数字で、数量や序列の意味を明確にする必要のある場合には数字を用います。
“三十三間堂”は「33ゲンドー」になります。
いかがでしょうか。
ちょっとややこしいですね。
このほかにも数字の表記に関する細かい規則は色々ありますが、ここでは割愛します。
以前もチラッと言いましたが、点訳ソフトを使うぶんには、点字の表記を覚えなくても点訳はできます。
しかしその場合でも、こうした点字のルールは知っていないと正しい点訳はできません。
付録:数字の覚え方
数符と“アイウルラエレリオロ”。
これで数字が読めます。
今度エレベーターに乗ったときには、ぜひ階数の点字表示を読んでみてください。
数字を表す4点(①②④⑤点)の位置関係に注目し、形で覚える方法もあります。(下図参照)
次回はアルファベットです。
Last Update 2010-06-03 (木) 12:33:02
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